返済生活が始まって2年ほどたった頃。
長年働き続けている今の会社で大きな環境の変化があり、自分の数年先、10年、20年先の未来について考えるようになった。
今の仕事を頑張り続けても、それでずっと食べていける保証がない。
会社はコロナ禍で大打撃を受け、たくさんの社員がリストラにあい、いつ畳んでもおかしくない状況だし。
転職しようと思った時に、何が出来る?
そう思った時に、今の自分に何も無い危機感を覚え、いつか仕事に繋がるようなスキルを学ぼうと考えた。
興味を持ったのがWEB制作。
とある休日、
ネットで見かけたオンライン講座が気になり、体験レッスンを受けてみた。
これがだいぶ分かりやすくて自分のやりたいイメージと合致するので、この講座を受けたいと思った。毎月15000円なら払えそうだし。
前向きに考えようとしたが、世の中そんなに甘くない。
「入会金20万円」
にゅ、入会金…!
いまそんな貯金はもちろんない。
聞けば分割が出来るので、入会金ふくめて毎月3万支払えば良い。
しかしブラックリストの私はローンが組めない。
講座は約2ヶ月受ければ大体仕事ができるようなスキルが身について、実際に仕事の斡旋もするらしい。
仕事をもらうようになれば入会金もいつか取り戻せるはず。
そんな無責任ポジティブ発想でやる気になっていた。
では、その20万をどうするか?
そうだ、将来のためのお金だし、いつか返せる可能性もあるから、親に相談してみよう。
どうせやるなら初月無料キャンペーンに乗っかりたいから、あと1日で決断しよう。
そんな感じで休日が終わった。
彼氏にもこんなことがあったよと伝えて、次の日の朝。
入会を急ごうとしている私に彼氏から「ちょっと待って、詳しく話聞かせて」というメッセージが。
でも普通の仕事の日で、今日の21時までに入会しないといけないから時間がないかも、と伝えると
「やめとき!」
と言われて、ルンルン気分が一気に崩れる。
なんで話も聞いてないのにそんなこと言うの!と彼氏と大モメ。
時間を作ってちゃんと話すことになり、
まずは経緯から体験レッスンの話まですべて説明した。
彼氏の言い分はこう。
人を育てて仕事の斡旋をするようなシステムなら、学ぼうとする人にそんな高額なお金を請求しない。
2ヶ月で仕事が出来るようになると言いきれるなら、そのマニュアルで人を育てて仕事できる人間を増やし、会社が儲かるようにした方が良いはずだ。
つまり、スキルを身につけられても良い仕事が貰える可能性は低いだろうし、結局マルチと似た構造で、搾取されるだけだぞ、と。
悔しい私はこう返す。
「搾取だとしても、仕事もらえないにしても、私の目的は学んでスキルを身につけることだから。」
彼氏「それなら他にも学ぶ方法はあるだろ、YouTubeとかなんでも、お金かけずに」
私「調べたら何でも出てくるとは思うけど、今は何が分からないのか分からない状態だから、中途半端に知識を得るんじゃなくて1からちゃんと学びたい。
体験してこの内容なら分かりやすいと思って、学びたいと思ったのが1番の理由だよ」
彼氏「それは分かった。でも入会金はどうするの?」
私「親に相談しようと思う」
彼氏「なんでだよ」
私「いま貯金ないから…」
彼氏「自分で貯めてやれよ」
私「でも早く身につけて仕事できるようになったほうがいいし、キャンペーンもあるし」
彼氏「キャンペーンなんて気にするな、長い目で見たら対して変わらない。そして仕事は貰えるか分からないって。
将来のこと考えて前向きに動こうとしてるのは良いことだよ。けど本当に学ぶことが目的なら自分で貯めてやるべき。」
私「なんで…親に借りたらダメなの…」
そんな感じで時間がきて、話し合い終了。
モヤモヤを抱えながら、まだ納得のいかなかった私は親に連絡した。
将来のこと考えてこんな講座を受けようと思うんだけど、入会金がなくて…どう思う?と。
親は講座の詳細をしっかり見て、あんたが今後のことを考えてやろうとしてるなら応援したいと言ってくれた。
ただ、実は今祖母の調子が悪く、いつどうなるか分からない状態とのこと。
葬儀もあり得ると考えたら今パッと出すことができない。少し待ってくれないか、ということだった。
その言葉を聞いて、入会金の準備は無理だと諦めた。
祖母の体調不良、危険な状態という情報に驚いたのもあるが
お金を借りたいと言った自分にも恥ずかしさと情けなさを感じた。
入会を見送った夜、かなりネガティブな状態で彼氏と会った。
どうせ私は…とつまらない愚痴を吐いていると
彼氏が「そんなに良いと思ったんなら、お金貯めてやったらいいじゃん?」と。
正直自分はお金を貯めたことがない、出来ない、自信ない。借金もある。
だからもっと稼ぐ方法を考えたんだ、だけどダメだった、今の私は何も出来ない…!
そんなことをピーピー言っていると、彼氏から一喝。
「お金がないからって親に頼るなよ。まず自分で出来ることを考えようよ。
貯金だって本気でやろうと思えばできるよ。
お金から逃げるなよ。」
"お金から逃げるな"
この言葉がぶっ刺さり、わたしは号泣した。
子供みたいに泣いた。
というか、まだ子供だった自分が泣いていた。
子供が社会を学ぶ時、なんでも自分の思い通りにいくわけじゃないんだと実感して泣くのと同じように。
欲しいものを買ってもらえなくてショッピングモールの床で駄々をこねている子供のような、
そういう気分だった。
沢山泣いたあと、状況を冷静に判断できるようになった時、
お金のない自分と向き合おうと決めた。
30越えてやっとのこと。
今思い返すと、恥ずかしいくらいだ。
やりたいことがあっても、お金が無くてできない。
貯金がない。
手が届かない。
30代らしい生き方ができない惨めな自分に気づく。
返済生活から2年、本当の意味で借金と、お金と向き合うことができた。
そして貯金への挑戦が始まった。